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「………A、さっき“どうして私だけ生き残ったのかなぁ”って言ったけど」
「うん……」
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「俺と会うためでしょ」
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「え?」
「俺と幸せになる、そういう運命だったから………」
「運命……?」
「そう」
「じゃあ、隆二さんは?隆二さんも私と出会う運命だった?」
「そう。俺はAに出会うために生まれてきた」
隆二さんはそう言って照れくさそうに鼻の辺りを指で掻いた。
「………説得力、ない?」
どうして隆二さんは、こんなに大きく深いところで私を包んでくれるんだろう。
「……ありすぎです。説得力」
「本当?」
「本当。だって私、今すごく幸せだから」
気が付けば、いつの間にか波は穏やかになっていた。
風もぴたりと止んだ。
夕凪の中、両手を握って向かい合う私たちの頭上で
一番星が、光っていた。
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────あの写真の中の私が必死で手を伸ばしていたのは、レンズの向こうの両親にだろう。
でも、私は幼い私に言ってあげたい。
あなたが伸ばしているその手の先には、未来が待っていると。
待っている未来は楽しいことばかりじゃないけれど、弱いほうに流されず強く生きるのだと。
いつか出会う、運命の人が
頑張って伸ばしたその手を、
必ず優しく握ってくれるから。
“君に出会うために生まれてきた”
そう言って、優しく握ってくれるから。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年9月2日 14時