My dove. ページ45
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隆二さんの荷物は着々と我が家に運び込まれ、家電の類いはレンジを除き、お互いが持っている物から新しい方を置くことにした。
こっちで寝たりマンションで寝たりしながら、隆二さんも片付けを始めている。
完全に引っ越すまでにはまだ少し時間がかかりそうだけど、それでも一緒に居る時間が格段に増えたことが嬉しい。
その嬉しさのせいか、反対していた“木を植える”ということに、私はすっかり乗り気。
「アオハダかぁ……」
パソコンのモニターいっぱいに映った枝ぶりが涼しげな樹木。
庭に木を植えるならシンボルツリーに向いている物の方が良い。
手入れがそんなに要らなくて、虫が来なくて────
「何？木植えんの？」
秀香がぐいっとモニターを覗き込んだ。
「そう。うちの庭に植えようかなって」
「木植えんの！？」
「うん」
「木だよ！？」
「うん」
「トゥリーよ！？」
「うるさいなぁ！ダメなの！？」
「えー？良いよー？どうせ今市隆二が“木植えよ！クリスマスにはイルミネーションで飾ろうよ！”とか言ったんでしょ」
「………私に盗聴器付けてるでしょ」
「えぇ！？図星！？」
「なーにー？悪いー？」
「全然。何か良いじゃん……あったかくて」
イルミネーションの季節まではまだ遠い。
それでも、秀香の言った“あったかい”景色が目に浮かぶ。
キラキラした庭を眺める私の隣に、隆二さんの笑顔があることも。
「そのアオハダ？の写真見せるために早く帰ってあげなよ」
「うん、そうする」
私は定時に会社を出て車に乗り込み、ルームミラーでお化粧を直した。
隆二さんが家で待っている。
疲れた顔のまま帰りたくない。
鼻の頭と額にポンポンっとパフを乗せてから、私はエンジンをかけた────。
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「やっと着いたー」
真っ暗な庭に車を停め、助手席の荷物を持って降りると、スーッと芝生に光の筋ができた。
「ん？」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2017年9月2日 14時
