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「使ってない6畳あるじゃん?あそこにピアノ置いて今市隆二の音楽部屋にしてさ。おー!我ながら良い案!」
「音楽部屋………」
その部屋から漏れてくる隆二さんの奏でるピアノの音を聞きながら、昼御飯にオムライスを作る────
想像しただけで眩しさに目が眩む。
「でも……隆二さん良いって言うかな……」
「聞いてみれば?」
「今?」
「うん、今」
「今は無理だよ。今頃歌うたってるもん」
「あぁ、東京に居ないのか。じゃあ帰ってきたら。どう?」
「聞くだけ聞いてみる……」
“んー!”と伸びをして起き上がったゆかりは「Aのお願いにNO!って言うかね」と首をかしげる。
「隆二さんて、Aの言うこと何でも聞いてくれそうじゃん。怒ったりしないでしょ?」
「ううん。この間怒られたよ。“うるせぇなぁ!ごちゃごちゃごちゃごちゃ!”って」
「うっそ!今市隆二が!?あんたに!?へぇー………偉そうに」
「偉そうに!?」
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そして、隆二さんが帰ってきた次の日。
庭の縁台にあぐらをかいて携帯をいじっている隆二さんの膝に、私は頭を乗せて寝転んだ。
ポストに入っていたスーパーのチラシを見ながら、いつ話を切り出そうかと様子を伺う。
「………秋だな」
「ん?天気?」
「うん」
チラシをずらして目だけ出して隆二さんを見上げると、彼は眠そうに目をこすっていた。
「ここで日向ぼっこしてると眠くなるんだよなー」
「………好き?」
「何?お前のこと?好きだよ」
髪をくしゃっと撫でられて、私の心はポッとする。
────違う。ポッとしてる場合じゃない。
「この庭が好き?って聞いたんです」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年9月2日 14時