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歩き出した隆二さんの肩を、私は両腕で抱き締める。
「バックハグですね、これ」
「違う。おんぶ」
「ふふ」
「ちょっ、苦しい」
「あ、ごめんなさい」
隆二さんの肩は大きくて、抱き締めようとすると私の腕が喉に当たるらしい。
「隆二さん」
「はーいー」
「隆二さーん」
「なに？」
「隆二さんのこと好き過ぎてしんどいです」
「………」
隆二さんは何も言わなかったけど、その頬が持ち上がるのが見えて、私は彼の背中にギュッと体を寄せた。
「ねぇ、隆二さん」
「んー？」
「………私で……良いんですか」
「何が？」
「さっきね、隆二さんキラキラな人と喋ってたでしょ？」
「キラキラな人？」
「そう、キラキラな綺麗な人。隆二さんとその人が喋ってるの見てね、お似合いだなって思ってしまったのです」
「“思ってしまったのです”」
隆二さんは笑うけど、お似合いだったから……きっと私は……癪に触ったんだと思う。
「あぁ。それで“あほ”か」
「隆二さんには、ああいう人がお似合いなのかなって。楽しそうに喋ってたしね、何かね……みんなもそう思うのかなって」
よいしょ、と私を背負い直した隆二さんは「だいぶ酔ってんな」と小さく笑っただけで、それ以上何も言わない。
「隆二さん、私は本気で聞いてるんですよ」
「………」
「ねぇー！」
「………」
「おい！聞いてんのか！ちょび髭！」
「俺ちょび髭じゃねぇし！」
「聞いてるんじゃん……って、私うざい？ねぇ、うざい？」
「うざくないけど……何で急にそんなこと聞くのかなって」
「だからぁ、キラキラな人と喋ってたからですよ……私は普通だから」
「普通ねぇ……」
「うん。一般人だし、生い立ち複雑だし、すぐ泣くし、胸なんかBよりのCだし……隆二さんの好きなタイプに全然当てはまってない……なのに何で私なんか……」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2017年9月2日 14時
