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私はそれが来るまでに泣き止もうと、必死で鼻をかむ。
「Aちゃんは、誰かのために泣ける優しい人だよね。自分の方が辛い思いいっぱいしてきてるのに俺が悩んでるときに“それがどうしたの？”なんて絶対言わないもん」
「私のことは良いですよ……今日は臣くんの日」
「俺の日？じゃあ早く泣き止みな。隆二が来たら怒られる」
「うん、分かった……鼻かむね」
「………それ、鼻、強くかみすぎじゃね？」
「そうかな………」
「うちの親父思い出すわ」
そう言って臣くんが笑った。
「臣くんが笑ってくれるなら、鼻が取れてもかみます私」
「いや、鼻取れたらひくから」
「嘘だぁ。一瞬笑っちゃいますって」
「いやいや！ビックリして………やっぱ笑うかな」
くだらないやり取りに笑う私たちの元へ、臣くんが頼んだ“トワイスアップ”なるお酒が運ばれてきた。
「これ……ウイスキーですか？」
くびれたグラスに鼻を近づけ、私は香りを吸い込んだ。
「苦手？」
「ううん！大丈夫です」
本当は、ウイスキーは苦手。
お酒が強いわけじゃない私には、ピリッとくる味。
「よーし！今夜は飲みますよー！」
「おー、潰れんなよー！」
「広臣もなー！」
────慰める言葉ならいくらでもある。
でも、今夜彼が飲みたいと言うならば、私はそれにとことん付き合おう。
彼女が消えて行った通路は、振り返らないように。
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「じゃあさー、じゃあさー、俺に似合う人ってどんな人よ？」
「臣くんに似合う人？そうだなぁー……まず、天然美人」
「え、顔？」
「あ、美醜のことじゃなくて。内面が綺麗な人って外見も綺麗でしょ。だから、そういう人」
「性格が良いってこと？」
「そう。妬みとか嫉みとかなくて、嘘つかなくて、イメージでいうと白い人。清潔感と透明感があって……アルプスが似合う人」
「いねぇよそんな奴！」
「えー。居ると思うなぁ……臣くん出会いが多そうだし」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2017年9月2日 14時
