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「暫くして、Aちゃんが☆さんっておうちに引き取られたって話聞いて。個人情報なんて言葉ない時代だったから」
今じゃ無理ねと橘さんは笑う。
「そしたら今度は引き取られたお家で何か困ってないかなぁって気になり出して……」
「うちにいらして下さったんですよね？」
「そうそう！本当に余計なことばっかりしちゃって。でも、とっても良いお家で……もう心配するのやめようって。Aちゃんのお母さんも天国で安心したかなと思ったから」
「そうなんですね……私、随分気にかけて頂いてたのに全然知らなくて」
「良いの良いの！☆さんが季節ごとにお手紙くれてたりしてたし、今日こうして来てくれたから……遠かったでしょ？泊まって帰るの？宿は？」
「今日は日帰りで……あ！」
私はバッグから名刺を一枚取り出した。
「今は東京に住んでて、ここに勤めてます」
名刺を見た橘さんは何度も頷き、目に涙をためた。
「立派なとこにお勤めなのね……それに、やっぱり血かな？」
「血？あっ、父が大工だったからですか？」
私が微笑むと橘さんも微笑んだ。
「Aちゃんのお祖父ちゃん。お母さんの方のね、お祖父ちゃんも大工さんだった」
「え、そうなんですか！？」
「そう。だからきっと、物作りの血筋ね」
橘さんは声を上げて笑って、私も血が騒いでこの仕事に就いたのかと可笑しくなった。
「あ……その血筋のことなんですけど、父か母は健康に問題ありましたか？持病とか……」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2017年9月2日 14時
