色戀、召しませ。─sequel─4 (ページ30)

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「それが窮屈だったみたい。向こうの気持ちが日に日に離れていくの分かるんだよ……会う度に、空気が重くなって」

空気が変わるとき────

二人をとりまく空気が変わるのは、良いときばかりじゃない。

「別れ話するときにね、大事にしてもらってるのに恋愛感情として好きで居られなくなったって言われて……あれは堪えたなぁ。大事にしてもダメならどうすりゃ良かったんだよって」

「修復しようとは……思わなかった？」

「思わなかった。何て言うか……隆二がAちゃんの手をしっかり握ることが愛情だったとして、俺は彼女を自由にすることが愛情だった」

「愛情………」

「Aちゃんにも色々してもらったよね。未だに思い出すよ、彼女が寮から飛び出してさ、Aちゃんに迎えに行ってもらったこと」

「ありましたよね……凄く昔のことみたい」

「うん……まぁ、色々あったよね」

───臣くんの手で閉鎖的な生活というカゴから出してもらった彼女は、広い空を知った。

その空に向かって羽ばたきたいと思った彼女のために、

臣くんは“行って良いよ”と窓を開けた。

もう、戻ってくることはないと知りながら。

「彼女は彼女で悩んでたと思うよ。非情になれない人だったからね……」

「………後悔は、ないんですか」

「うん、ない。やれることはしてやったから………この“してやった”みたいな感覚がよくなかったのかなぁ？」

臣くんはまた、苦笑いをする。

「多分、俺が苦笑いしちゃうのは笑うしかないからだろうね。女心が分かんなかった自分に」

「……そんなことない！私、臣くんにいつも助けられてる。女心が分からないなんて、そんなこと……ない。臣くんは優しい人だから……」

私が泣いてどうするんだ。

そう思うけれど、今まで別れの理由を口にしなかった彼の心が痛いくらいに伝わってきて────

「私が出来ること………何かありますか」

「そうだなぁ……お酒付き合って」

「………そんなことで良いんですか？」

「そんなこと？今の台詞後悔させてやるからなー」

臣くんは店員さんに、聞き慣れないお酒を頼んだ。