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私は念願の靴が手元にやってくるのを待っている間、隆二さんを探して店内を見渡す。
「………あれ?」
彼の姿がお店のどこにも見当たらない。
キョロキョロしている間に店員さんがやってきて、私は靴を受け取り店を出た。
「どこ行っちゃったんだろ……」
頭を左から右に動かしながら隆二さんの姿を探していると、
「あっ」
エスカレーターの所でこちらに背を向け、電話をしている彼を見つけた。
「居た居た」
私は驚かさないようにゆっくり近づき、背中をトンッと指でつつく。
“ん?”とこちらを振り返った隆二さんは、私の腕に掛かっている紙袋を大袈裟に2度見したあと「あ、ちょっと待って」と電話の相手に告げた。
携帯を耳から離した隆二さんは、私の方に顔を近づける。
「みんなで飯食うって。俺らもおいでって言われてるけどどうする?」
「あ………い、行きます!」
「行く?大丈夫?無理しなくて良いよ?」
「大丈夫です」
再び携帯を耳に当てた隆二さんは「行くわ。何時から?」と言いながら私の頭を撫でた。
………これは“いい子いい子”かな?それとも“無理すんなよ”かな?
どっちにしてもその手が気持ちよくて隆二さんの方に体を寄せると、彼は頭を撫でていた手で私の肩を抱き、自分の方に引き寄せた。
「1回車置いてくるから時間かかるかも。場所は?」
隆二さんは肩を抱いていた手を上へと滑らせ、今度は私の頬を指の甲でゆっくり撫で始める。
────あやすようなこの手付き。
苦手な場所に向かう私へ、隆二さんからの参加賞かもしれない。
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お店についた私は、挨拶をしてから隆二さんをみんなの輪の中に突飛ばし、自分だけお店の隅っこの席に移動した。
毎度のことなので隆二さんも何も言わないし、周りの人も笑って見ている。
照明もあまり届かないような席で飲み物を頼んだあと、私は靴をはきかえた。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年9月2日 14時