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「何にも知らないAちゃんには焦ってるように見えて当然だよね。俺がAちゃんでも思うよ、話ばっかり先行してるけど大丈夫なの?って……でも、大丈夫。隆二さんちゃんと考えてるから」
驚いて何も言えない私に、岩ちゃんゆっくりと微笑みながら話を続けてくれた。
「きちんと段階踏んでるよ、隆二さん。一緒に住むって話も焦ってるからじゃないんだ。自分が水面下で動いてるだけじゃAちゃんが不安になっちゃうからって……どう?安心した?」
「はい……でも何にも知らなかったから、今ちょっとビックリして……」
「本当だ。顔に“ビックリ”って書いてある」
岩ちゃんはそう言って笑ったあと「内緒ね、この話」と人差し指を唇に当てた。
「は、はい。内緒で!」
────太陽が沈んでいく。
昨日からの私の些細な不安を飲み込むように。
「隆二さんはさぁ、あの太陽みたいに熱い人だけど、この世界でやっていくために切らなきゃいけないものはスパッと切る度胸があるでしょ。でも何をどうしたってAちゃんのことは切れない。それだけ大事で必要だからだよ」
私の知らない世界のことを“ほら”と絵本を開くように岩ちゃんが聞かせてくれた言葉たち。
その言葉がどれほど私の胸を叩いたか、岩ちゃんは分かっているだろうか。
「岩ちゃん……すごいね。セラピストみたい」
「あ、響いた?響いた?」
「すっごく響いた!ありがとう岩ちゃん……来てくれて良かった」
でも、庭でぼーっとしたくて来た岩ちゃんに、たくさんお話をさせてしまった。
「お礼にならないかもしれないんですけど、夜ご飯もう出来てるから食べて行きませんか?」
「え!良いの!?」
「ぜひ!カレーの日、隆二さんあんまり食べないから、岩ちゃんが食べてくれると嬉しい」
「やっぱカレーだった?何かカレーの匂いするなぁって期待してたんだよね」
「ふふ。あ、部屋入って下さい。どうぞどうぞ」
「うん。隆二さん帰ってくる前に食べちゃお。また“何で居るんだよ”って怒られたくないから」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年9月2日 14時