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隣に腰を下ろすと、岩ちゃんは「洗濯物の匂いがする」と言って目を閉じた。
「人が生活してる匂いって落ち着くじゃん?」
「私は……生活の匂いに埋もれて暮らしてるのでよく分かりません」
「そっか」
岩ちゃんは麦茶を一口飲んで、また庭に目をやる。
疲れているなら一人にしてあげた方が良いかなと立ち上がろうとした時、
「………どう?隆二さんと」
とても穏やかな口調で、岩ちゃんが私に尋ねた。
「えっと……隆二さんとは……はい」
「はいって?」
「………一緒に住もうって言われたんです」
「おぉ!良いじゃん!」
私は曖昧に微笑んで、風に揺れる洗濯物を目で追う。
「何か………隆二さん焦ってるのかなって。上手く言えないんですけど、力付くて進めようとしてる気がして……」
「心配?」
「少し。私たちはこうしたいんです!だからみなさん許してね!って……そんなの通るわけないから。そういうのは、嫌だなって」
岩ちゃんは、そのまましばらく黙り込んだ。
「あの………おかしなこと言ってますか。私」
「ううん、今考えてた。Aちゃんが物凄く頭の悪い子だったら良かったなぁって」
「え?」
「隆二さんに言われたことを何にも考えないで“うんうん!”って喜んで受け入れる子だったら……でもやっぱ嫌だな。賢い人が隆二さんの隣に居る方が良いや」
「………余計な心配しすぎですか、私」
「あのね………俺がこれ言うのルール違反なんだけど」
岩ちゃんは庭から私へと視線を移した。
「心配しなくても、不安にならなくても、大丈夫だよ」
「どうして?」
「隆二さん、ちゃんと事務所に言ってるから。“結婚したい人が居るから、来年に向けて調整して下さい”って」
「………え?」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年9月2日 14時