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Selection. ページ15






翌日仕事に復帰した私は、早速現場に出て溜まっていた仕事を片付けた。









「雨かぁ……」









毎日毎日、雨ばかりで工期が遅れている。









湿った溜め息と一緒に会社に戻り更衣室のドアを開けると、河合さんが長椅子に体を横たえていた。









「ビックリしたぁ!どうしたの?そんなとこで。仮眠室使えば良いのに」









「あ、Aさん。すみません、退きます」









「良いよ良いよ、寝てて。だるい?体」









「少し……」









ロッカーを開けTシャツを脱ぐ私の後ろで、河合さんはハンカチを口に当てた。









「………え、河合さん。私、変な匂いする!?」









「ち、違います!Aさんは良い匂いです!最近、四六時中何か口に入れてないと気持ち悪くなって」









「そうなんだ……何かしてあげたいけど……あ!飴食べる!?」









「あ、飴!?」









「そうそう。うちのお姉ちゃんがつわりで気持ち悪くなると飴食べてたんだよね。河合さんにも効くか分かんないけど」









私はノンシュガーの飴をバッグから取り出し、2つ手にして河合さんの隣に腰を下ろした。









「ん。良かったら食べて」









「ありがとうございます」









二人で包装を破り、飴を口に入れる。









「………最近、雨ばっかりだよね」









「……あ、飴だけにですか」









「………妊娠すると冗談がつまんなくなるの?」









「酷くないですか!?」









更衣室の中に、コロコロと飴を転がす音と私たちの笑い声が響いた。









「………Aさん、私のこと迷惑だって思ってますか」









「ん?」









「空気で分かるんです。みんな“急にデキて迷惑”って、思ってるなって」









「あぁ……」









こればっかりは人によるだろう。









何とも思ってない人も居るだろうし、そうじゃない人も居るだろうし………。









「仕事、辞めた方が良いんでしょうか」









「……何か……女って選択を迫られる機会が多いよね。最近思う、私」









「……そうかもしれません」









「仕事を続けることを選んだのは河合さんだからさ。周りのことはあんまり気にしない方が良いよ。結局、節目節目で選択しながら、行き着くところは決まってるんじゃないかなぁ」

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年9月2日 14時

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