Roots. ページ1
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────その日の朝は、車に乗り込むまでが大変だった。
私が服装に迷ったから。
カジュアルはどうかと思うし、かと言ってスーツは堅苦しい。
ならばツーピースと思ったけれど、それもしっくりこない。
クローゼットから白いワンピースを取り出して着てみたけれど“バカンスか!”と突っ込みたくなる感じ。
キャミソール姿でウロウロする私を見かねて、隆二さんは「これにしろ!」とフレンチスリーブの黒いワンピースを目の前に付き出した。
結局、無難が一番。
隆二さんが選んだワンピースにサマーカーディガンを羽織り、私はやっと助手席に乗り込んだ。
「混んでないと良いなぁ?」
隆二さんは車のナビに住所を入力し、シートベルトを締めた。
「どうする?お店にはA一人で入る?」
「うん、そうしようかな。いきなり訪ねて男の人と一緒だとビックリされちゃうかも」
「だなぁ」
いきなり訪ねて、受け入れてもらえるだろうか。
積乱雲のように沸き上がる不安で、私は隆二さんの手を強く握る。
隆二さんは“大丈夫”と言う風に、握り返した手を優しく揺らしてくれた。
「行こう」
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「この上だな……」
お昼を少し過ぎた頃、目的地の近くに着いた私たち。
ゆるやかな坂道の途中に車を停め、隆二さんはその先を探るように頭を少し傾けた。
「あそこに見えてるカフェですよね……」
「そうだと思う」
ロッヂにも見えるそのお店は、緑豊かな山道の中に建っていた。
「……じゃあ、行ってきます」
「うん。俺は……そこのカフェで待ってる」
土地柄だろうか、カフェやレストランが立ち並ぶ道。
隆二さんが指差したカフェと私が今から向かうカフェは、100mも離れていない。
でも雰囲気が違うから、お客さんを取り合うことはなさそう。
「何かあったら電話してよ」
「はい。分かりました」
緊張しながら車を降りた私は、前方に見えるカフェに向かって歩き出す。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年9月2日 14時