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「………うわぁ……そういうことか……うわぁ……みんなに言うくらい本当に好きってことだよねぇ……」
「うん。それか、周りから見てバレバレとかね……」
私はデスクに突っ伏し「うわぁ……」とだめ押しで呟いた。
片想いで良い、あの人に好きな人が居たって良い。
振り向いて欲しいとかそんな贅沢は言わない。
そう思ってるつもりなのに、本能の部分で“彼にとってそんなに好きな人なのか”と落ち込む自分が居る。
「相手のこと、知ってるの?」
「え?」
「Aは、隆二さんが好きな人のこと知ってるの?」
「少し……」
「どこの誰?」
「雑誌の人」
「雑誌の人?モデルさん?」
「ううん、何て言うんだろ……撮影の時とかにお茶用意したり……そういうことしたりしてる」
「雑用係ってこと?」
「そう……なのかな」
四季はボールペンを顎に当て、ん〜?と唇を尖らせた。
「今時の出版社に雑用係雇う余裕なんてあるかなぁ……」
長引く出版不況。四季の言うことはもっともだ。
「見てみたいなぁ……」
「え?」
「私も見てみたい!隆二さんが好きな人!何か興味出てきた」
「四季がぁ!?どうしたの急に!?」
「Aから隆二さんに好きな人が居るって聞いたとき、私てっきりこっちの業界の人かと思ったんだよね。だったら深く聞かないのがルールかなぁって……でも今の話聞いたら私たちと同じ一般人じゃない」
「そうだけど……」
「なーんか興味出てきちゃったー」
ワクワクしたような笑顔で、四季は「どこの出版社?なんて雑誌」と私に訊ねる。
「えっと───」
雑誌の名前を言うと、四季は「あれっ?」と首を傾げ宙を見た。
そしてそのまま椅子を回転させて、後ろの席のチーちゃんの背中をつついた。
チーちゃんは“千春”という。
童謡“さっちゃん”みたいなあだ名の付け方だ。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年12月23日 23時