雪椿の頃。 (ページ7)

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恋の輪郭。ページ7

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────私の片想いに春は来ない。

そう、この寒さと同じ。
ずーっと冬だ。

私が困った顔をしていると必ず“どうしたの？”と声をかけてくれたり

何かお手伝いをすると、どんなにバタバタしているときでも“ありがとう”を欠かさない。

そんな隆二さんを好きになった時、彼には彼女が居た。

だから、私は“好きです”という言葉に蓋をした。

“別れたらしいよ”と聞いたのはそれから半年ほど経った頃。

四季に“今がチャンス！”と背中を押されても、私は動けなかった。

しんしんと降り積もった彼への半年分の気持ちが重すぎたのか、“好きです”の蓋が開かなくなってしまったのだ。

好きですと駆け寄ることは出来なくても、せめて少しでも距離を……そう思っているうちに

隆二さんに好きな人が出来た。

スタッフという立ち位置から隆二さんの色んな表情を見てきたせいか“あの子と喋ってるときの表情が違うな”と、私はすぐに気が付いてしまった。

私はダメな弱虫で、諦めることも振り向かせることも出来ないまま今に至る。

“彼のことを見てるだけで良い恋なの”……なんて嘯く私に春は来ない。

だから、私の恋はずーっと冬だ。

恋が寒いせいか、余計に体が冷える。

駅から事務所までを歩きながら、私はコートのスタンドカラーの中に鼻から下を埋めた。

今朝の寒さは厳しくて、呼吸しようとするとまるで氷を飲み込んだみたいに喉が塞がる感じがした。

空気が針のように無防備な耳を刺してくる。

「おはようございます」

玄関のところに立っている警備員さんに挨拶をして通りすぎようとして………私は足を止めた。

「あの、良かったらこれ……」

私はバッグの中から温かい缶コーヒーを取り出し警備員さんに差し出した。

「さっき当たりつきの自販機で当たったんです。ブラック飲めないのに思わず押しちゃって……コーヒーお嫌いですか？」

「いえ！好きです！頂いて良いんですか？」

「どうぞ！寒いですよね、今日。ちょっとでも暖まってもらえたら私も当たった甲斐があります」