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「どうぞ……」
「ありがとう」
ビール片手にフロアに消えていく隆二さんの背中がカウンターに反射していて、私はカウンターの中の彼の背中を目で追う。
その背中がカウンターの端から消えた時、臣さんが「A」と私の名前を呼んだ。
「は、はい」
.
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「Aは、隆二のことが好きですか」
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「……何でそんなこと聞くんですか」
「だって、耳赤いもん」
臣さんはコスモポリタンを指差し「同じ色じゃん」とニヤリと笑っている。
「……やっぱり、可笑しいですか。スタッフの分際で好きになって……厚かましいですよね」
「全然。でもさぁ……」
臣さんは、少し声を潜めた。
「あいつ、好きな人居るよ」
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“あいつ、好きな人居るよ”
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「………知ってます」
「え?」
「知ってます。でも好きなんです」
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知ってます。
あの人に好きな人が居ること。
知ってます。
私の片想いに春が来ないこと。
知ってます。
私がわざとガラスの靴を落としても、彼は拾ってくれないことを───。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年12月23日 23時