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「……あ!いえ!誰かと一緒だったのかなって。と、友達とか」
「あー1人1人。誰かと行けば良かったよねー。そしたらそこまで気持ち悪くなかったかも」
隆二さんはもう1度笑って、傍に居た店員さんに「これください」と私が持っていたリップスティックを指差した。
「かしこまりました」
パキッとしたメイクの店員さんが再度色の確認をしてからコイントレイを持ってきた。
「あ……隆二さん、これは私が」
「何で」
「2本も買ってもらうのは───」
私がそこまで言ったとき、
隆二さんは微笑みながら自分の唇にスッと人差し指を立てた。
それ以上言うな
大人しく払わせろ
黙れ
どの意味かは分からないけれど、その仕草と表情に心臓を鷲掴みにされた私。
ポーっとした表情のまま、カードが乗ったコイントレイを会計へと運ぶ店員さんの背中を眺めてから、ふと鏡に目をやった。
……今日、チークの位置間違えたかな。
そう思うくらいに、耳たぶの辺りまで赤く染まった私の顔。
「うわ……」
手でパタパタと顔を扇ぐ私の横で、隆二さんは平然と香水を見ている。
「……こ、香水買うんですか」
「ん?ううん」
「……隆二さんの持ってるやつって」
「俺は、これ」
隆二さんは綺麗なボトルのキャップを開け、隣に置いてあるムエットに吹き掛けた。
そして2、3度それを振ったあと、私に「はい」と手渡した。
私は手渡されたムエットを鼻に少しだけ近付ける。
「あ……本当だ。この匂い」
「良い匂いだよね」
「はい……とっても」
私が微笑むと、隆二さんも微笑み返してくれた。
心臓が鷲掴みどころか握り潰されそう。
顔中が赤く染まって、中国の京劇みたいになってるんじゃないかと思う。
「☆さんは?どこの香水つけてる?」
「今はつけてません」
香水の瓶を手に取って見ていた隆二さんが「え?」と私の方を向いた。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年12月23日 23時