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「時間読み間違えちゃってさー。早く着いたから今LINEしようと思ってたとこ」









隆二さんが私に見せた携帯には、確かにLINEの画面が表示されていた。









「結構待ちましたか?」









「ううん、早く来てくれて助かった。行く?」









「は、はい」









横断歩道を渡ると、すぐそこにあるデパート。









歩き出した隆二さんの少し後ろを私は遠慮がちに着いていく。









「このまま1階で良いんだったっけ?」









お店のドアの前で、隆二さんが振り向き様に私に訊ねた。









「は、はい。入ってすぐです」









「よし、行こー行こー」









パーキング側の入り口から入って左手にトムフォード、イヴサンローラン、ディオールが肩を並べている一角がある。









この配置を考えた人は、私と趣味が合うはず……多分。









「あ。あった」









シックな内装のトムフォードが目に入り、私は口紅のコーナーまで足を進めた。









「で、どれなの?」









隆二さんに聞かれて、私はダスクピンクのリップスティックを手に取った。









「これです」









「俺が買ったのどれだった?」









「こっち。このスパニッシュピンクです」









繰り出して2本並べて見せると、隆二さんは腰を屈め黒目を左右に動かしながら2色を交互に見た。









「………全然違うじゃん」









隆二さんの唇から溢れたその言葉が可笑しくて、私の唇からは笑い声が出た。









「違うよね?何で間違ったんだろ」









「見た目の色と実際塗った色はちょっと違うから……難しいですよね」









「そっかぁ。俺さぁ恵比寿の店行ったんだよ」









「あ、三越?」









「そうそう。んで1本ずつ口紅をこう……」









「チェックしたんですか?」









「うん。絶対店員さんに気持ち悪い奴だと思われた」









笑う隆二さんの笑顔が売り場の眩しいくらいのライトに照らされていて、私の胸が大きく波打つ。









「………1人で買いに行かれたんですか」









「え?」









意図せず自分の口から出た疑問。

3→←Perfume.



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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年12月23日 23時

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