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「私は、隆二さんに土下座なんかしません」
それに、あのときの恋がそこで終わってしまったことを、誰かのせいにする気はない。
私がはっきりと“好きな人が居るから二人では会えない”と言っていれば良かったし、
意中の彼も私のことが心底好きだったならそんなことで引いたりはしなかったはず。
例え引かれたとしても、私が必死にすがれば良かったんだ。
恋がダメになったのは、全部、私が中途半端だったせい。
「でもね、岩田さん」
「うん?」
.
.
「気のない人からのアプローチがプレッシャーになることは身をもって知ってるんです、私」
.
.
「……うん」
「隆二さんには好きな人が居ます。今、良い感じみたいです。だから私は二人を邪魔したくありません……片想いで良い理由、これじゃいけませんか」
彼女になりたい!と思わなきゃ……アピールしなきゃ……好きでいちゃいけませんか。
「……いけなくないよ。相手の幸せを願うからこそ……だもんね」
「そうです……」
岩田さんはペットボトルを並べる私の後ろにピッタリくっついて回ってくる。
「でもさぁ、Aが隆二さんを幸せにしてあげようとは思わない?」
「え?」
「奪うとか取り合うとかじゃなくて、自然と隆二さんがAのことを好きになったら?それなら二人を邪魔したことにはならないよね?」
「ならないですけど……そんなこと──」
「あの二人はまだ付き合ってないんだもん。隆二さんの心変わりを誰かが責める権利はないよね?」
最後の1本をテーブルに置いた私と、形の良い唇をグイッと上げた岩田さん。
「………どうしたんですか?らしくないですよ。そんな……け、けしかけるようなこと言って」
「けしかけてるんだよ」
「えぇ!?何で!?」
「俺、最近人生について考えるんだけどー」
「え……」
「もったいないじゃん」
「もったいない?」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年12月23日 23時