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私に語りかけながらも、四季の視線は談笑している隆二さんと白ニットを捉えて離さない。
「Aはとっても綺麗なのに隆二さんを見るときは恋する乙女みたいな表情になって……そういうところ、私は凄く魅力的だなって」
「ちょ、ちょっと褒めすぎじゃない?何か居心地悪いな、あんまり褒められると」
肩をすくめて照れ笑いする私に四季は首を横に振って応えた。
「褒めすぎじゃないよ。確かに白ニットも可愛いかもしれない。でもさ、あの子の可愛さは花束の可愛さ。Aは一輪で様になる花。全然違う」
四季は黒々とした瞳を私に向け「その違いが分からない隆二さんじゃダメなの」と言った。
「ダメ……かな?」
「ダメ。Aには50歳くらいの人が良いね」
「50!?50ってうちのお父さんとあんまり変わんないんだけど!?」
「それくらい年上に“いい子いい子”って撫でられてるのが似合うってば」
「えー……何かやらしい、それ」
「やらしいじゃん、A。お洒落系のやらしい漫画に出てきそう」
軽くウェーブのかかった髪を揺らし、四季が笑う。
このふにゃふにゃっとした笑顔も大抵の男の人は好きなはず。
「やらしいことはないんだけどなぁ、私……」
私はまた階段の手すりの間から真下を見た。
白ニットが携帯を隆二さんに見せている。
連絡先の交換?それとも写真でも見せてる?
何をしているか分からないけれど、隆二さんは笑顔だ。
────隆二さんが他の誰かに笑いかけている時の笑顔を見ると、内蔵が一回り小さくなったみたいにお腹がギュッとなる。
告白はおろかアピールも出来ないくせに、切なさだけは一丁前な私。
「ちょっとー、あれ何見てんの?二人で顔寄せ合ってさぁ……私、確認してくる」
「え!ちょっ!四季!」
慌てて掴んだ四季のジャケットの袖は、私の手からスルリと抜けた。
「四季!」
“良いから良いから”という風に手を振った四季は、階段を降りて壁伝いに二人に近づいていく。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年12月23日 23時