4 ページ10
・
────歩き出した中村くんの背中は、真っ直ぐでピンっとしていて、光っていた。
夢を追う男の背中の、何とかっこいいことか。
「頑張れ」
小さく呟いて、私は踵をキュッと鳴らし家路を急いだ。
.
.
.
.
.
「ただいまー！」
「おかえりー」
隆二さんは玄関まで出迎えに来てくれて「どうだった」と、私の髪を撫でた。
「ちゃんと見送れました。でも………やっぱ寂しいです」
「……いつでも会いに行けるじゃん。同じ地球なんだし」
靴を脱いでいた私は、ピタリと動きを止めた。
「それ……中村くんも言ってた」
「本当？あれじゃん？思考が似てる」
「…………同意しかねます」
「はぁ？俺だってめっちゃ星に詳しいからな」
「本当にぃ？」
「今度聞かせてやるよ」
ふんっ、と鼻を鳴らし「お茶入れてあげる」とリビングに戻っていく彼の背中。
その背中は、真っ直ぐでピンっとしていて………
夢を追う男の背中は、
やっぱり、かっこいい。
.
.
.
.
.
.
「台長、大丈夫ですか？」
「う、うん、大丈夫」
中村くんを見送って3日後、東京駅のホームで私は、若干顔色の悪いおじさんの背中を擦っている。
「緊張してるんですか？ねぇ？台長？緊張？転校生の気分？」
「い、いや、大丈夫」
絶対大丈夫じゃないし。
「大丈夫ですよ！台長はこの世界では有名な人なんです！すごい人なんですからドーンと構えてください！」
「………ドーンとね」
「………」
ホームに、車両が入ってくるアナウンスが響いた。
「台長、長野に遊びに行ったときは案内してくださいね」
「じゃあ、ちゃんとリサーチしとかなきゃだね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 678人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽち。
| 作成日時：2017年6月29日 11時
