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「あらー?わざわざお出迎え?」
「ねぇねぇ!パイナップルケーキって何!?」
「俺があげた石どうした?」
「隆二さんはお出迎えなし?」
それぞれ好き勝手なことを言いながら玄関の中に入った俺たち。
「何か甘い匂いするね、今日は何焼いてたの?」
俺が訊ねると、
「カップケーキです」
Aが答えた。
「そっか、カップケーキか………」
………ん?
スリッパに足を入れようとしていた俺たち4人の動きが一斉に止まる。
「え………今、Aが喋ったの?」
Aは少し顎を上げ、俺たち4人を順に見つめてから、もう1度口を開いた。
「小夜、みんなが来てくれるからお出迎えに出たんだよ。カンナ、パイナップルケーキは今度焼いてあげるね。臣さん、石は小物入れにちゃんと置いてあります。岩田さん、隆二さんは中で待ってますよ」
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────そうだ。こんな声だった。
Aは、こんな風に優しい声で、それで………それで………
「おー、いらっしゃい。どうしたの?何かビックリすることあった?」
リビングから出てきた隆二さんは笑ってて、俺たちはまだ呆気に取られてて。
「………こ、こ、声ぇ!」
臣さんが絞り出すように言ったその一言は完全に裏返った声だったけど、Aは真っ直ぐ伸びやかな声で「出るようになりました」と微笑んだ。
いつもの、よく出来た笑顔で。
「良かったー!!」
「早く言ってよ!」
「私の予言当たったじゃないですか!」
「本当だ!当たった!」
俺たちは、Aにハグしたり頭を撫でたり、背中を撫でたり。
Aはワシャワシャされてる犬みたいになってたけど………でもとっても嬉しそうだった。
「ね、ね!早く入って下さい!みんなにお礼したいから頑張って料理作ったんです!」
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────みんなで料理を食べている間、Aはよく喋った。
大きな声で“ありがとう”って言いたかったことや、夜光虫のこと
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年6月29日 11時