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それは、嵐のように。side H ページ10





Aが焼いてくれた薄めの生地のパンケーキは、表面はカリッとした食感で口の中に入れると溶けていくようだった。









「これすっごい美味しい!」









「ありがとうございます!食レポはその辺にしてカンナちゃんのお店行った話を!」









「………あ、何?A、引っ越しすんの?」









テーブルの上の紙を手にしたら、Aはそれを引ったくった。









「もったいぶらないで早く話して下さいよ!」









Aと隆二は身を乗り出すようにして、俺の方に顔を向けている。









「えっとね……店に行って……話した。何か凄く普通でさ。“久しぶり”とかもなくて」









「それで?」









「それで、あの時のことは気にしてないって。連絡絶ったのも店を辞めたのも勢いみたいなもんだったらしくて」









「そうだったんですか……」









「今、店長代理なんだって。店に呼び戻されたみたい」









「で?臣は何か言ったの?」









「うん……またあの頃みたいに戻りたいって」









「随分ストレートに言いましたね」









「え、ダメだったかな……」









「ううん。良いと思いますよ。変に小細工するより全然良い………それで、肝心なことなんですけどカンナちゃん今、お付き合いしてる人とか居るんですか?」









「今付き合ってる人居ないって」









「「本当に!?」」









隆二とAは身を乗り出しすぎて上半身のほとんどがテーブルの上にある。









「本当。でも、そんないきなり“そうですか”って前みたいには戻れないって」











カンナは俺がポジティブな感情を抱えて会いに来たことにすら驚いていた。









やんわり“どの面下げて”と言いたかったんだろうか。









進んだような進んでないような………この状況をどうしたら良いか聞くのは、この二人が一番だと思った。









「カンナちゃん、臣さんの気持ちに気付いたんじゃないですか………ずーっと片想いだと思ってたのが“まさか”って戸惑ってるのかも」









「どうかな……分かんないけど……また店に来ても良い?って言ったら“どうぞ”って」









「「どうぞ!?いたっ!」」

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年5月6日 21時

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