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めちゃくちゃ張り切って欲しい訳でもないけど、一緒に住むための引っ越しなんだからもうちょっとやる気を見せてくれても良いのに、と思う。









少しムッとしながら私は食器を梱包材の中に詰めていく。









「隆二さん」









「何?」









「当日、引っ越し屋さん何時に荷物取りに来るって?」









「10時……9時………えっとね、午前中」









「………ふぅん」









これ、私が手伝ってるから良くないのかな?









ほっといた方が一人でやるかも。









「私、休憩しまーす」









「はーい」









CDと格闘している隆二さんの後ろを通りすぎ、私はピアノの椅子に腰を下ろした。









「ピアノも引っ越し屋さんに頼むんですか?」









「いや、それは専門の業者に頼んである」









「そっか。大事ですもんね」









私は鍵盤の方に向き直り“きらきら星”を人差し指で弾いてみる。









「………本当にきらきら星しか弾けないの?」









「あ!これも弾ける!」









私は隆二さんに“ソファソ”の音を繰り返して弾いてみせた。









「………それポテトが揚がった音じゃん!」









「そう!」









「それ弾くって言わねぇし」









隆二さんは笑いながら私の隣に座り「きらきら星弾いてみて」と腕をつついてきた。









私が言われた通りに弾き始めると、隆二さんも左手の指でピアノを弾き始めた────









「………あ!ちゃんとした曲になってる!」









隆二さんの左手、私の右手。









二つ合わさった“きらきら星”









「これ連弾ってやつですか!?」









「連弾?……2人で2手だから………連弾って言うか1人で出来ることをわざわざ2人でやってるって感じ?」









「1人で出来ることをわざわざ2人で?」









「そう」









「………何かそれ、凄く良いですね」









────隆二さんは、返事の代わりに笑顔を見せてくれました。









「もう1回、一緒に弾いても良いですか?」









「良いよ」









これが終わったら、隆二さん1人でも出来る片付けを









またやろうと思います。









わざわざ、2人で。

作者より。(移行編)→←3



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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年5月6日 21時

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