2 side H ページ44
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「それアレでしょ?“今日持ち合わせねぇや”と思ってたらポケットに一万円入ってるの見つけたとかでしょ?だからいっぱい頼むことにしたんだ」
「何か良いですよねぇ、隆二さんとこ。見た目はシュッとした二人なのにエピソードは可愛くて。理想的」
「俺の発言全部無視か!」
カンナはうっとりした表情でため息をついて、濃い睫毛をしばたたかせた。
「………ひょっとしてその箱、隆二んとこにあげるやつ?」
「そうです。二人の新生活に」
浮世の垢に染みてないこの笑顔はとても可愛いと思うけど、そろそろこっちに染みて欲しい。
「カンナ、俺らも理想的なカップルになれると思わない?」
「うーん………」
「何がダメなわけ?ほら、見てよ。俺も緊張して住所ガタガタに書いちゃった、ほら」
ミミズが這ったような字を書いて見せると、カンナは苦いような顔をした。
「付き合ってくれるならこの店全部買い占める!どうよ」
「臣さん………パクりじゃないですか」
「パクりじゃないよ。オマージュ」
「オマージュ?どこにも臣さんのオリジナル要素ないのに?」
「もー、だから何がダメなんだよ」
「そういうとこですよ」
「だからぁ!」
「もう、早く書いてくださいよ。私忙しいんですから。はぁ」
カンナがついたそのため息は、うっとりとは程遠い“うんざり”だった。
「はぁ」
俺もため息出るよ。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年5月6日 21時