4 side T ページ17
・
「いつも思ってたんだけど、このお茶何?」
「これ?ルイボスティー」
「………後味が湿布だよね」
「えぇー!?そうですかぁ!?でも、体には良いんで飲んでください」
「はい、分かりました」
もう一度優しく微笑んだ小夜は、耳の後ろの髪をそっと撫で付けた。
「ねぇ、それは何て言うの?その後頭部の……複雑な三つ編みみたいなの」
「これは三つ編みじゃなくてフィッシュボーンって言うんです。魚の骨みたいでしょ」
「言われてみれば……」
「で、ここ、サイドはロープ編み」
「………やっぱ複雑だなぁ」
複雑に編んだ髪を適度に崩したアップスタイルは、彼女の雰囲気によく似合ってる。
「ちょっと触って良い?」
「え……あ、どうぞ」
恐る恐る伸ばした指先に触れたその髪は、綿菓子みたいに柔らかかった。
「何か……思ったよりフワフワなんだね」
「そう……ですか?」
髪に触れられる距離は、即ち顔の距離も近くて。
吸い寄せられるように唇を重ね、軽いキスをして────
「……私ってつまらないですか」
離れた小夜の唇から、思いがけない言葉が出てきた。
「え?」
「いつもキスして終わりですよね」
「それは……」
「先に進む面白さがないですか」
「………違うよ。何か……古くさいかもしれないけど、大事に思ってるから躊躇しちゃって」
「そっか……」
小夜は少し俯き“うんうん”と何度か頷いた。
「優しいんですね、岩田さん」
「優しいって言うか」
「でもその優しさ、いい加減にして下さい!」
小夜は俺の胸ぐらを掴んで引き寄せて、さっきとは比べ物にならないようなキスをしてきた。
え?って一瞬思ったけど……。
「……もう散々躊躇したからいっか」
.
.
.
.
複雑に編み込まれた彼女の髪が手の中でほどけていく。
汗ばんで、息を切らし、吐息が絡むのは
森じゃなくて、
1kの部屋だけど。
683人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「登坂広臣」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年5月6日 21時