検索窓
今日:2 hit、昨日:15 hit、合計:345,945 hit

4 ページ9





ゆっくりゆっくり動くゴンドラ。二人だけの空間。









「高いとこは平気なの?」









「うん、それは平気です」









「ふーん」









アクリル板の向こうの景色は少しずつ上昇していく。









「見て、隆二さん。ドーム」









「ん?」









私に覆い被さるように体を寄せて、隆二さんはアクリル板に顔を近づけた。









「あ、本当だ。見下ろすの初めてかも」









彼は笑顔で眼下の景色を目に映している。









「………あそこ、いっぱいにしちゃうんですよね。隆二さんたち」









「ねー?」









「ねー?って他人事みたいにー」









笑う私と、









「今は他人事にさせといてよ。二人の時は」









優しく微笑んだ彼。









ゴンドラは、てっぺんまであと少し。









「折角だからベタベタなことしとく?」









「え!?」









近付いてくる彼の顔から逃げるように、私はじわじわ顎を引いた。









「え、嫌なの?」









「………こういうベタベタなこと、よく考えたらしたことなくて」









体中にこみ上げてくるくすぐったい思い。








「結構………恥ずかしいですね」









「……それは、俺もだけど」









俯いたままの私の唇を押し上げるように、隆二さんはキスをした。









彼の手が私の後ろ髪を撫で、そのまま下に降りてくる。









髪を切り、無防備になったうなじに直に触れられて私はそっと目を閉じた。









.









.









.









軋む音をさせて、ゴンドラはてっぺんに着きました。









ちょっとだけ、窮屈な空間でのそのキスは








.









.









.









今までした中で、宇宙に一番近いキスでした。

彼女の軌道。side H→←3



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (90 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
780人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年3月4日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。