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ゆっくりゆっくり動くゴンドラ。二人だけの空間。
「高いとこは平気なの?」
「うん、それは平気です」
「ふーん」
アクリル板の向こうの景色は少しずつ上昇していく。
「見て、隆二さん。ドーム」
「ん?」
私に覆い被さるように体を寄せて、隆二さんはアクリル板に顔を近づけた。
「あ、本当だ。見下ろすの初めてかも」
彼は笑顔で眼下の景色を目に映している。
「………あそこ、いっぱいにしちゃうんですよね。隆二さんたち」
「ねー?」
「ねー?って他人事みたいにー」
笑う私と、
「今は他人事にさせといてよ。二人の時は」
優しく微笑んだ彼。
ゴンドラは、てっぺんまであと少し。
「折角だからベタベタなことしとく?」
「え!?」
近付いてくる彼の顔から逃げるように、私はじわじわ顎を引いた。
「え、嫌なの?」
「………こういうベタベタなこと、よく考えたらしたことなくて」
体中にこみ上げてくるくすぐったい思い。
「結構………恥ずかしいですね」
「……それは、俺もだけど」
俯いたままの私の唇を押し上げるように、隆二さんはキスをした。
彼の手が私の後ろ髪を撫で、そのまま下に降りてくる。
髪を切り、無防備になったうなじに直に触れられて私はそっと目を閉じた。
.
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軋む音をさせて、ゴンドラはてっぺんに着きました。
ちょっとだけ、窮屈な空間でのそのキスは
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今までした中で、宇宙に一番近いキスでした。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年3月4日 17時