4 side R ページ39
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─────待ち合わせ場所でAは空を見上げていた。
“早く雨止まないかなぁ”と吹き出しを付けたくなるような表情で。
「A」
一際目立つ赤いビニール傘をくるっと回し、完璧な笑顔でAはこちらに振り向いた。
「傘、派手だな」
「太陽みたいじゃないですか?」
Aは少し傘を持ち上げて見せる。
「太陽?これが?トマトみたいだけど」
「嘘ぉ!ちょっとショック」
肩をすくめて笑う彼女の手には大きめのカバンが握られている。
「泊まる用意してきたんだ?やらしい女だな」
「泊まる用意してきただけでそっちの用意はしてませんけど?やらしい男ですね」
「そのやらしい男と飯食う人ぉー」
両手が塞がってる彼女はもう一度傘を持ち上げて「はーい」と返事をした。
「何食いたい?」
「パスタ!」
「好きだなぁ!イタリアンがよー!」
「好き!」
「俺は?」
「隆二さんもイタリアン好きですよね?」
………違うだろ。そこは“大好き!”だろ。
何でこういう時に抜けちゃうんだよ。
「……行こ?」
「うん…………」
.
.
.
.
「ねぇ、隆二さん」
「ん?」
サラダの中のカラフルな豆を端に寄せながら、Aは上目使いで俺のことを見た。
「何?可愛い目して」
“もう”と言いながらも照れ笑いしたAは「岩田さんと小夜のこと」と言ってフォークを置いた。
「小夜、朝は元気よくうちを出ました」
小夜が彼女の家で泣いたこと、そのまま泊まったことは朝イチでAがかけてきた電話で聞いた。
「彼氏と話するって言ってた?」
「ううん、何も。私、小夜に何か相談されるまで待とうかと思います。私が“どうなった?”って聞くのは……違うかなって。小夜なら正直に話すだろうし」
「……岩ちゃんも待つって言ってたよ、小夜の返事。良い返事でも悪い返事でも、受け止めるんじゃないかな。元々彼氏いるって知ってて好きになったんだから、ふられるの覚悟の上でしょ」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年3月4日 17時