4 side R ページ34
・
岩ちゃんはそこに誰が居ようと“今日空いてる?”なんて小夜を誘っていたのに、いつからか人目を避けてコソコソ話すようになった。
岩ちゃんと話していると小夜の話題がよく出るようになって……
無意識ほど、分かりやすいものはない。
「岩ちゃん、小夜のこと好きなのかなぁって気付いたのはその頃。彼氏居るのになぁって」
次に空気が変わったのは、ついこの間。
岩ちゃんの纏う空気そのものが、変わった。
覚めないと思っていた夢から叩き起こされたような、ぼんやりした戸惑いが彼を包んでいた。
「………俺、小夜に言ったんだ。好きだったって」
「いつ?」
「昨日」
「……ちょっと、ずるいんじゃない?タイミング」
「だよね。俺も思った。でも、もう言うしかなかった。今日も言えなかった、また言えなかったって小夜に会うたびに思ってて……」
「小夜は?」
「何にも答えなかった。ふってくれると思ってたんだけど」
「そう……」
小夜も鈍いわけじゃない。
岩ちゃんの気持ちに気付いてたはず。
“彼氏がいる”という大義名分があるんだから、岩ちゃんの気持ちが迷惑なら距離を置けたはずなのに彼女はそうしなかった。
………小夜も、そんな自分の気持ちに戸惑っていたかもしれない。
彼氏が帰ってくれば、夢は覚めるのだと思っていたかもしれない。
「隆二さんとAが元に戻ることに、俺ちょっと賭けてた。結ばれるべき同士は、時間とか距離とか関係なく絶対に結ばれるって、この目で見たかった」
「………その目で見て、どう思った?」
「………小夜の“結ばれるべき相手”が彼氏なのか俺なのか……違う誰かなのか、黙っててもそのうち答えが出るんだろうなって……思った」
「……でも、好きって言わずにいられなかった?」
岩ちゃんは「黙ってられなかったね」と、また苦笑いを浮かべた。
「良いんじゃないかな。好きって伝えることは悪いことじゃないと思うよ、俺は」
780人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「登坂広臣」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年3月4日 17時