3 side R ページ33
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「岩ちゃん、たまには飲みに行く?」
「えぇ!良いの!?」
大袈裟!と言いたくなるくらいに、岩ちゃんは顔を輝かせ振り向いた。
「彼女出来て付き合い悪くなったって言われたくないからさぁ。いつものとこで良い?」
「良いけど………Aは?会わなくて大丈夫なの?」
「昼間会って来た。ちょっとだったけど」
「そっか。じゃあ行こ!」
“いつものとこ”は二人で丁度良いくらいの小さな個室がある店。
してもしなくても良いような世間話をしながら店まで行き、最初の一杯を頼んだ。
「俺これ、シャンパン。隆二さんは?」
「んじゃ同じの」
店員を呼んで、広げたメニューからあれこれオーダーしてる岩ちゃんを見ながら、俺は腰を浮かせ椅子に座り直した。
「ごゆっくりどうぞ」
個室の扉が閉められて、一時の静寂が訪れる。
「隆二さんから誘って貰えると思ってなかったなぁ」
「えー?俺結構誘ってるよね!?最近はアレだったけど」
「アレね」
二人で意味ありげに笑って……俺は岩ちゃんに尋ねた。
「岩ちゃんの“アレ”はどうなの」
「え?」
「好きな人……居るんじゃないの」
岩ちゃんは“なんのこと?”って一瞬笑って、すぐに目を伏せた。
「……そのこと聞くために誘ったのかぁ……やられたなぁ」
汚れてもいない手のひらを何度もおしぼりで拭いながら、岩ちゃんは苦笑いを浮かべる。
「言いたくないなら良い。お節介だと思って流してくれて良いよ」
「お節介なんて思ってないよ。ただ……珍しいなと思って。隆二さんが恋愛のこと聞こうとするなんて」
「うん……俺、小夜に頭上がんねぇから。小夜に関わることは見て見ぬふり出来ないんだ」
この数年で、岩ちゃんと小夜の間に流れる空気は2度変化した。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年3月4日 17時