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「断ったんだけど、陸人納得してないの。そりゃそうだよね理由も言わないで………改めて今日話そうってなってたんだけど……会いづらくて」
「え、待って。誰かに好きって言われてプロポーズ断るって………小夜、その人のこと好きなの?」
「分からない。でも……その人に好きって言われなくても陸人の話断ってたと思う………ってことは好きなのかな!?」
小夜はふざけたようにそう言ってぎこちない笑顔を浮かべた。
彼女の人生に関わるその選択に、影響を及ぼした人は一体どこの誰なんだろう。
「………その人って誰なの?」
重い沈黙のあと、小夜は小さく口を動かした。
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「岩田さん」
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居眠りをしている最中に、顔に水をかけられたような気持ちだった。
何故、ここで岩田さんの名前が出てくるのか。
何故、今になって恋愛感情が生まれたのか。
「最初はそんなんじゃなかったんだよ?彼氏に会えなくて寂しいときは付き合ってあげるよって。他の仕事仲間とご飯食べたりするのと同じだった」
私が働いてた頃から、二人が食事したり買い物に行ってたのは知っていた。
だけどそれは、私と中村くんが仕事帰りに一杯だけ一緒に飲むような、そんな感じだったと思う。
「昨日、陸人に会う前に岩田さんに呼び止められて」
「うん……」
「好きだったって言われて─────」
そう言った途端、堰を切ったように小夜は泣き出した。
このまま上手く息が出来なくて、倒れてしまうんじゃないかって思うくらいに。
「……好きだったって言われて、自分の気持ちに気付いたんだね」
手で顔を覆い何度も頷く小夜を見て、私も泣きたくなりました。
岩田さんに告白されて私に会うまでの一晩、“これは違う”“好きじゃない”と彼女は何度も自分に言い聞かせたのではないでしょうか。
彼女が描く幸せの絵に、陸人くんの姿が見えなくなった。
その理由が自分の心変わりだったと気付いた彼女の心は、
とても痛いはずです。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年3月4日 17時