3 ページ28
・
.
.
.
.
少しだけ仕事を抜けさせてもらって、バス停まで隆二さんを見送りに。
「ごめんな、何かバタバタで」
「ううん。会えて嬉しかったです。隆二さんのスケジュールが空いたら、今度は私が行きますね」
「泊まる用意してこいよ」
「え………あの……はい」
「何真っ赤になってんの!?やらしー!変な想像したでしょ!?」
ものすごーくニヤニヤしながら隆二さんに突っ込まれて、私は慌てて「違います!」と否定したけど、
本当は、ちょっと、想像した。
淡く柔らかな褐色の肌に包まれている自分を。
初めは温かい彼の肌が段々と熱を上げ、しっとりと露のような汗を浮かび上がらせる様が頭の中で再生されて────
「…………まじで何想像してんの?」
「……してませんよ!ほ、ほら!バス来ましたよ!乗った乗った!」
追い立てるような仕草をしたら、隆二さんは「ひでぇな」と笑ってから、荷物を持っていない手で私の腰を抱き、頬を寄せた。
羽のように軽くて優しい彼のハグが私は大好き。
鼻先が彼の鎖骨の窪みに当たって良い匂いがすると心が落ち着く。
「じゃあね」
「うん」
窓側に座った隆二さんは“バイバイ”と唇を動かして、私はそれに手を振って応える。
ゆっくり動き出したバスを見送りながら、切ない気持ちをグッと飲み込んだ。
────本当は、バスに乗り込む彼の服の裾をギュッと引っ張りたかった。
.
.
.
.
.
その日の帰り、3日分の食材を買い込んで帰宅した私は、買い物袋をキッチンに置きストーブに火を入れた。
テレビをつけると夕方のニュースで“節約主婦”を特集していて、リモコンを持ったまま思わず見入ってしまう。
「………あ、いけない。買ったやつ冷蔵庫入れなきゃ」
トイカプセルの惑星マグネットがくっついている冷蔵庫の扉を開け食材を入れていると、カバンの中で携帯が鳴った。
夕方に電話が鳴るのは珍しい。
誰だろう?とカバンから携帯を取り出すと、画面には“陸人くん”の文字。
「もしもし?」
“もしもし、お久しぶりです”
780人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「登坂広臣」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽち。 | 作成日時:2017年3月4日 17時