6 side R ページ15
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「え、お仕事は？終わった？」
「終わってない。また夜から」
「えっ」
Aは足を止め、俺は後ろに引っ張られる格好になる。
「何？忘れ物？」
「違う………。もう帰るってことですか？」
「そうだよ？顔見に来ただけ」
「……やだ。そういうの」
明らかに不機嫌な顔になったAは俺の手を離し、一人でずんずん先へ進む。
「え？顔見に来られるのやなの？」
「そうじゃないけど」
「じゃあ何」
「期待するじゃないですか。今夜一緒に居られると思った」
拗ねた口調でそう言って、Aは両手をコートのポケットに突っ込む。
「ちょっとだけ会うって、逆に寂しいでしょ？私は寂しいです」
拗ねてんだか、甘えてんだか、ワガママ言ってんだか………よく分からないけど、少し丸まったその背中がとても可愛い。
「A」
呼び掛けても止まらないし、振り返りもしない。
「Aー」
足を早めて彼女に近寄り、肩を掴んで無理矢理こちらに向かせて─────
「え………泣いてる？」
「ちょっと……。遠足が中止になった気分です……」
「お、おぅ」
「折角会いに来てくれたのに鬱陶しいこと言ってるのは分かってますけど、でも、今すごくがっかりして……どうして良いかよく分かりません………」
「……じゃあ、今度からちゃんと連絡してから来るようにする。顔だけ見に行くよーって。良い？」
「はい……。あの、バス来ちゃうから急ぎましょう」
────バス停で赤い目をした彼女と、弱ったなぁと思ってる俺の前に、駅に向かうバスがやってきた。
「夜、電話する。寝るならLINEして」
「………はい」
これ………このまま“バイバイ”して大丈夫なの？
とは言え、仕事を飛ばすわけにもいかない。
「まだ怒ってんの？」
「だから、怒ってはないです」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2017年3月4日 17時
