星のランプに、恋を灯せば。4 (ページ1)

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夜空に口づけを。(前編) side R ページ1

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車だと時間が読めないから電車で行こうと提案したら、Aは「大丈夫ですか？」と少し不安そうな顔をした。

「大丈夫だよ。俺の顔、世間にそんなに認識されてない」

「そうかなぁ？」

「バレても他人の空似でいくから」

「強引」

クスクス笑うAの髪は、風が吹くたびに耳の辺りで揺れて、ほのかに甘い香りが漂った。

カットしたばかりのその髪が気になるのか、彼女は頻りに毛先を触っている。

電車に乗ってからもそれは続いて、俺は思わず「気になるの？」と問い掛けた。

「切りすぎたかなって思って……」

「そう？」

「だって隆二さん、長い髪が好きなんでしょ」

目を伏せ、とてもゆっくりとした口調でそう尋ねた彼女に、電車の揺れと同じように俺の心も揺れる。

「長い髪が好きだけど、俺のために伸ばしてるような子は好きじゃない」

「………んー………」

どういう意味？と笑いながら首を傾げる彼女の鈍感さも愛しくて、手を握り「似合ってるから良いよ」と微笑んだ。

「あ！そう！岩田さんが来たんですよ！隆二さんが来る前に！」

「知ってる。バッタリ会ったから。Aが“遅ぇんだよ”ってキレてるって言ってた」

「私そんなこと言ってない！」

「いやぁ、どうかなぁ」

“なんすか”って言った前科があるからなぁ。

「岩田さん、私のこと“人里に降りてきた”とか言って弄るんですよねぇ……」

「普段弄られてばっかだから自分が弄る人がいて嬉しいんじゃない？」

「あぁ……そっか。じゃあ良いや」

良いのかよ。

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「ドームの遊園地久しぶり！」

Aはキョロキョロと目を動かし「ちょっと雰囲気変わりましたね！」と腕を絡ませてきた。

黒いトップス、グレーのコート、控えめなダメージデニムに白いハイカットのスニーカー。

首から下の色味の少なさが、鮮やかな笑顔を引き立たせていて、これは彼女の計算なのか？と思う。