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綺麗な瞳に見つめられて、我慢していた涙がじわっと溢れる。
「私が………私が受け取らないと思いますか?」
震える声を必死で真っ直ぐにしながら、私は隆二さんから受け取ったピアスを寒さで感覚の薄れた右耳につけようとした。
「………指が冷たくて……上手くつけられないな」
「貸して」
もたつく私を見かねて、隆二さんが代わりにピアスを付けてくれた。
ポケットに入れていたせいか、彼の指は仄かに暖かい。
「出来た」
「………似合いますか?浮いてない?ピアスだけ」
「全然、しっくりきすぎ」
私たちは小さく笑って、彼のために持ってきたマフラーの下で手を繋いだ。
「これは二人で対になってる物だから。離れてること多いけど、その間も俺はAを守るし、Aは守られてる………ちょっとこの台詞くさい?」
「全然。隆二さんが言うと浮かない」
人気のない公園に二人の笑い声が響いた。
「でも、どうして急に?ビックリしました」
「いや、年を越す前に大事なことは言っとかないと」
「そっか」
私は隆二さんの手を強く握り締めた。
「私、隆二さんのこと守れるほど強くないんですけど………でも味方ですから、いつでも。隆二さんが辛いとき悲しいとき挫けそうなとき、左耳で味方してますから」
「………うん」
「………あ、そう言えば甘いものどうしました?買った?」
「………買ってないけど、今貰ったから良いや」
鼻声で微かに震えた彼の声、それを隠そうとするその笑顔を、私は心から愛しいと思った。
「泣くなよー隆二ぃ」
私は隆二さんの鼻をギュッと摘まむ。
「泣いてねぇよ」
この夜、彼が口にした一字一句を私は忘れることはないでしょう─────
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年12月23日 18時