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甘い良い匂いに混じって、お鍋からチリチリという音が聞こえてきた。
「絢、火強いんじゃない?」
「そう?」
「うん、それ焦げると台無しだから」
チラチラと絢の方を見ながら、私はお肉を冷蔵庫から取り出した。
サイコロ状に切りながらもう一度絢の方を見て………そのまま二度見した。
「絢、火が強いって」
「んー………そうかな?」
「強いよ。それ私がやるから絢はお肉焼いて」
「了解です師匠」
お鍋の中の玉ねぎを炒めながら、私はお肉を焼き始めた絢から目が離せなかった。
「絢、表面に焼き色付けば良いから」
「うん」
「…………もう、良いんじゃない?あと赤ワインでフランベするんだよ」
「フランベって火がボフッてなるやつだよね。あれ好き」
「…………うん………その前にさ、お肉焦げるじゃん。それ以上やったら」
「大丈夫でしょ」
「……………」
「……………」
「…………分かったぁぁぁぁあぁ!!絢が出来ないのは料理じゃなくて火加減だぁぁあぁ!!」
「な、なに!?何か問題ある!?」
「ありすぎだよ!!何で常に強火なの!?」
「常に全力だから、私」
─────は?
「絢は全力で良いよ!でも火は加減しようよ!」
「えーー!!」
「おかしいおかしい!そこで“えー!”おかしい!」
「分かったよー。んで何だっけ?あ、フランベか!」
「待って!」
常に全力の絢は私の言葉を聞かずに、バシャッとワインをフライパンに投入した。
──────瞬間、ボフッどころかボォォオォォオ!!と立ち上った炎。
「し、師匠ー!!」
「や、やばいやつ!これやばいやつ!蓋して!蓋!」
「蓋!!えぇぇえい!!」
まるで投げ捨てるように絢が放った蓋は、奇跡的にフライパンにピタっと収まった。
「………び、びっくりした」
「だ、だから火は加減しろって言ったんだよ………」
これ、ちゃんと完成するのかな。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年12月23日 18時