4 side T ページ17
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真希はきっと、いつもの調子で“ありがと。岩田さん”って笑うと思ってた。
目の前で大粒の涙を流す彼女を、結局俺は抱き締めることしか出来ないけど────
「指輪にするときにさ、デザインは真希が好きなものを選べるかなって」
俺の肩に預けた彼女の顔が小さく頷いたのが分かる。
「2016年は大分ほったらかしちゃったから、これからたくさん一緒に居られたら良いなって思ってる………どうなるか分かんないけどね」
「………ほったらかされても、1日の終わりに私のとこに帰ってきてくれたらそれで良い」
「そっか」
目に涙をいっぱいに溜めた真希は、俺の肩をハンカチでそっと撫でて「岩田さん」と語りかけた。
「岩田さんはきっとそんなこと言わないと思うけど、もし何か嫌になってお休みしたくなったら言ってね」
「え?」
「その間、私が食わせますから」
いつかの自分の台詞を真似た彼女に、俺は少し笑って、もう1度抱き寄せた。
「じゃあ、その時は頼むよ」
「うん、任せて」
頼れる彼女、って言ったらかっこ悪いかな。
でも、真希が隣に居たら全てのことが上手く回る気がする。
これって結構凄いことだと思うな。
「私、指輪にするとき立て爪が良いなぁ。ソリティアリングっていうんだっけ?」
「あぁ、良いね。綺麗だし」
「そう、綺麗だし………岩田さんが浮気とかしたらそれでシャーッ!て引っ掻ける」
「…………ん?」
「だからぁ、シャーッ!て」
「ど、どこを?」
「…………どこが良い?」
「…………浮気とかしないんで、シャーッ!の必要はないと思います」
「本当?良かった」
「………でも、つ、爪がないのも綺麗じゃない?ベゼルだっけ?」
やばい、また汗かいてきた。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年12月23日 18時