2 side A ページ11
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────臣さんどうしたんだろう。
浮かない顔して………。
ひょっとして、実家行くの嫌なのかな。
少ししかない休み、本音を言えばわざわざ緊張しに行くようなことはしたくないのかもしれない。
「あの、臣さん。もしアレだったら私1人で帰りますよ?」
「アレって?」
「だから………疲れてるからお正月は部屋でゆっくりしたい………とか」
「俺そんなん言ったっけ?疲れてるとかさ」
「例えばですよ。そんな怖い顔しなくても」
「俺、疲れてたとしても言ったことはちゃんとするよ。絢の実家行こうって言い出したの俺だし」
「だから、言い出したからとかじゃなくて、本当は休みたかったら遠慮しないで言って欲しいって」
「そう思ってたら言うってちゃんと!」
「何でそんな喧嘩腰なの……」
私は臣さんから目を逸らして、ベランダの方に顔を向けた。
南向きの窓から、一際輝く星が見える。
「………私は溜め息の理由とか、全部知りたいと思います。それが私にはどうすることも出来ないことでも、知らないまま流したくないんです」
臣さんは、私のお腹に手を回し「ごめん、大きな声出して」と呟いた。
「絢に顔色伺わせるようなこと、させたくないんだ」
「うん………」
返事をしてみたものの、それがどういう意味かよく分からない。
「あの事………ほら、絢の前の彼氏の。あの事があってから、やっと絢と真っ正面から向き合えた気がしてる」
臣さんが言うことに私は何度も小さく頷いた。
振り返っても引き摺られるものがようやく無くなった私。
今、過去を振り返っても、そこには優しい思い出しかない。
私を抱き締める度、臣さんにも私の背中の向こうにある過去がチラチラと見えていたはず。
それを気にせず、私たちは真っ正面から向き合えるようになったんだ。
「だからさ、絢が思ったこと遠回しじゃなくてズバッと言ってよ。疲れてんのかよー?とかって」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年12月23日 18時