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「この辺でお薬買えるとこありますか?ドラッグストアとか」
宿泊先の人に聞いたら20分ほど歩いた所に小さな薬屋さんがあるらしい。
“臣さん、好きです。私のことどう思ってますか?”
玉砕覚悟で言えば良いのかな。
告白?この歳で?もうそういうのは何となく察して始まるもんでしょ。
じゃあどうするの?結局。
いつの間にか着いていた小さな薬屋さんは本当に小さくて、白衣を着たおばさんが、ちんまり座っていた。
「頭痛薬……あった」
「お疲れ様」
背後から急に馴れ馴れしく声をかけられて喉の奥からヒュッて変な音がした。
「お疲れ様……みくさんも買い物?」
ビックリした拍子に肩が棚にぶつかって薬の箱が何個か落ちた。
「そうなの、登坂さん消毒液欲しいんだって」
だから、そういうの私の専売特許だったんだけど。
「消毒液?荷物にあったんじゃないかな」
箱を拾う私の目に彼女のヒールが映る。
働く気あんのか。
「あの噂が出たのも薬屋さんが原因だったね」
ラスト一個の箱を拾った彼女は、私の顔を覗き込んでそう言った。
「噂?なんだっけ?」
「忘れるわけないじゃん」
誰が?あなたが?私が?
私なら忘れるわけない。制服姿でそんなもの買えば、どうなるかも分からない位、動揺して手が震えたあの日を。
その話をきっと臣さんにしてたのね。勘だけは鋭そうなあなただから、私の気持ちに気づいたんでしょ?
ライバルは蹴落とさないといけないと思ったんでしょ。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年6月12日 19時