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「あ、俺、小銭ない」
「私も」
「取ってくるから待ってて」
「はい」
臣さんを待って、壁にもたれた私に会釈して先に自販機に小銭を入れた人がいた。
なんとなく、その人を眺めてた。
水と……紅茶を買って……横顔綺麗だなぁ、まつげ長くて、色も白いし……
「あぁ!!」
急に叫んだ私のせいで、その人の手から紅茶の缶が落ちた。
「あっ、すみません」
缶を拾って手渡して私は思いきって聞いてみた。
「あの……隆二さんの……」
その人は、辺りをキョロキョロしながら「はい」と言った。
「お会いしたくてずっと!隆二さんが月の光みたいに真っ白な人だって」
「私がですか?隆二さん、まだ覚えてたんだぁ……何か照れますね」
彼女はうっすら頬を染めて、あ!と言ってから腕組をした。
「んー……若草色」
「え?」
「隆二さんが電話で言ってたんです、会ったら何色か考えてって。会った瞬間、臣さんの!って分かりました」
二人が恋に落ちたとき、隆二さんには彼女がいたと岩田さんに聞いた。
きっと近道でも遠回りでも、この二人は必ず結ばれてた気がする。
「じゃあ打ち合わせ行ってきますね」
隆二さんと同じ香りを残して去っていく彼女と入れ替わりに臣さんが戻ってきた。
「あ!あれだよ隆二の彼女」
「さっきちょっとお話しちゃいました。素敵な人ですね」
「でもあの子、すげぇお弁当作るんだよ。俺、落ち込んだ時に思い出すようにしてるもん」
「なんですかそれ?」
「まぁまぁ。なに飲む?」
「それ、オレンジの」
「あ、はい」
「私、若草色なんですって」
「どんな色?はい、どうぞ」
言われてみれば若草色って……?
「調べてみる?」
「はい!」
二人して覗き込んだ携帯の中
「「あっ!」」
その色は
私たちには
少しだけ
蛍の光の色に見えたのでした。
fin.
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年6月12日 19時