レノクロス。 (ページ43)

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もういい加減覚えても良さそうな11桁が記されたレシートを取り出して、登坂さんに電話を掛けた。

“もしもし？あれ？夜じゃなかったっけ？”

「あ、ダメでしたか？」

“ダメじゃないよ！ビックリしただけ”

「ちょっと……声が聞きたくて」

こんな台詞、自分が使うなんて思ってなかった。

“面接、どうだった？”

「まだ分かりません。でも何か……決まりそうな気がしてきました」

“なにそれ”

この笑い声を傍で聞きたいな。

「Aちゃん！バイトの子遅刻してない？」

パートさんに急に声をかけられて、ビックリして受話器を落としそうになった。

“え！バイト遅刻してんの？俺が代わりに行こうか？やるよ、ミシン”

その姿を想像して笑いそうになったのを堪えてパートさんに“連絡してみます”と口を動かして見せた。

「あの……じゃあ、また」

“うん、またね”

電話を切って、暫く耳に残った声に浸ってしまう。

「Aちゃん！バイトの子！」

「あぁ！はい！今かけます！」

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風邪気味……寝たふり……急な腹痛……

お風呂上がりの彼氏の背中を見ながら、どうやってこの夜を乗り越えようか考えていた。

もしそうなっても目を瞑って、登坂さんのことを考えてたらやり過ごせるかな………。

考え事をしながら読んでいる雑誌は、星占いのページに入った。

「なぁ」

「何？」

「デスクに忘れてたよ」

蟹座と双子座のイラストの上に、投げ捨てるように置かれたのは

「誰の電話番号？」

無効のスタンプが押されたレシートだった。