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「今までもタイトル付けてきたの？」
「もちろん！」
「例えば？」
「えーっと、“柴沼も安心”とか」
「何それー！？」
大学の時に課題用に使っていたスケッチブックのタイトル。
教授が“柴沼”で「課題、間に合うの？」と聞かれる度に、そのスケッチブックを見せていた。
見せると教授は安心した顔をするのだ。
「だから“柴沼も安心”！？どんなタイトルだよ！！あとは？」
「あとは………“油引きの香り”」
「は！？」
隆二さんがゴホッと咳き込んで胸を叩きはじめた。
「大丈夫ですか！？」
「ねぇもう気持ち悪いシリーズやめて！」
「気持ち悪い！？油引きの香りは私の地元を描いたスケッチブックですよ！ひどい！」
「酷いのはお前のネーミングセンスだろ！油引きって聞いてあの街浮かばねぇよ！」
浮かぶよー？ピンとくる人は居るよー？
「素敵シリーズはないの？」
「素敵シリーズは……“南は海”とか」
「微妙じゃね？」
「そっか……うーん……何かあったかな」
辛い麻婆豆腐を口に入れて私は「んー」と考える。
考えながらお店の照明がポテッとしてて可愛いなと思った。
カフェです、と言われても納得してしまいそうな雰囲気のお店。
でも気取ったお洒落さじゃなくて、居心地が良くて何より料理が美味しい。
隆二さんはお店をよく知ってるなぁ…………
「………何の話してましたっけ？」
「スケッチブック！！」
「そうでした………」
「それは？トートに入ってるやつ」
隆二さんに指をさされて、私はトートから顔を出していたスケッチブックをギュッと中に押し込んだ。
「“痛い女”」
「こわ……」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2016年2月14日 21時
