色戀、召しませ。5 (ページ46)

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最後に、

隆二さんは“戀”という字を知っていますか？

“恋”の旧字体です。

断ち切れずに心が引かれる。思いわびる。いつまでも男女が慕い合って思い乱れる気持ちを表しているそうです。

心の上には言葉があって、言葉が糸と糸で結ばれています。

素敵な字だと思いませんか？

私は隆二さんと別れた夜、このスケッチブックを書き始める前に表紙のタイトルを書き入れました。

頼りなくても細くても、隆二さんとまたいつか糸で結ばれることを心のどこかで願っていたんだと思います。

私に見える隆二さんの歌声みたいな色の糸で結ばれることを。

そしてやっぱり、私の言葉と絵で綴ったこのスケッチブックを、いつかあなたに見てほしかったんだと思います。

流石に“痛い女”なんてタイトルはつけません。

あれは、照れ隠しだったと思って下さい。

私たち、これからどうなるか分かりません。

ひょっとしたら明日、隆二さんが私を嫌いになるかもしれないし

私が違う人を好きになるかもしれない。

でも、分からない未来よりあなたと居る今日が愛しいから、それを大切にしていきたいと思います。

今、このときも、私はあなたが大好きなんだと心の底からそう思います。

追伸
明日は天気が良いみたいなので、どこか気持ちの良い場所に連れていってくれたら嬉しいです。

Aより

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最後のページまで書き終えて、私はスケッチブックを閉じた。

窓から射し込む夕陽が、彼の寝顔を照らしている。

私はそっと表紙を撫でて、小さな声でそのタイトルを口にした。

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「色戀、召しませ」

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fin.