色戀、召しませ。5 (ページ45)

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私は小さい頃から“可哀想な子”と度々言われてきました。

何故、そう言われていたかは分かりますよね。

言われる度に、幼い私は曖昧に微笑みながら“私は可哀想なんだ”と思い込むようになりました。

でもそれは、何か失敗したときの言い訳に使うためだったような気がします。

可哀想な子だから仕方ないでしょ、と逃げるための。

実際の私は少しも可哀想じゃなかったのに。

朝、眠い目を擦って起きることが出来て

学校に行けば友達が居て、きちんと学ぶ場があって

家に帰れば温かい食事が待っていて

大人になってもそうです。

職場には仲間が居て、私を叱って褒めてくれる人がいて

自分の欲しいものを、自分で買えて

そして、私を愛してくれた人たちがいました。

“可哀想な私”が邪魔して終わった恋もあったけど

隆二さんが庭を眺めながら未来を語ってくれたから、あの日の“可哀想な私”は消えてしまいました。

人より少し大変だっただけで、私は可哀想でも不幸でもないと隆二さんが静かに教えてくれたんです。

このスケッチブックを、隆二さんに貰って欲しいと思います。

要らないと言われても、押し付けます。

中身を見て“こんなに事細かに書いて！”って怒るかもしれないし、やっぱり痛いなとか思うかもしれないけど

貰って下さい。

これは隆二さんと私の、涙と笑顔に溢れていた恋の一冊だからです。

毎回スケッチブックじゃ芸がないので、ちゃんと別のプレゼントも用意してます。