色戀、召しませ。5 (ページ44)

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隆二さんへ。

明日で隆二さんと私がよりを戻してから一ヶ月ですね。

あれからもう、一月も経ったなんて信じられません。

本当は、このスケッチブックは存在しないはずでした。

隆二さんにあげたスクロースの化学式がタイトルのあのスケッチブック。

その二冊目が出来上がるのだと、クリスマス頃の私は信じて疑っていなかったのです。

でも、2ヶ月と少し前、私は隆二さんに別れを告げました。

そしてその夜から、私は一心不乱にこのスケッチブックに鉛筆を走らせました。

早く忘れなきゃと思っていても、あなたが優しかったこと、かっこよかったこと、そして私があなたを大好きだったこと

記録に残したくて、出会いから別れまでをこのスケッチブックに綴りました。

書き始めて１週間で、別れの夜まで書いたのです。

今考えても、あのときの私のパワーはどうかしているとしか思えません。

別れの夜までを書き終えて、スケッチブックを本棚にしまいこみました。

見返すことなんて、二度とないと思いながら。

でも、あの夜、隆二さんが私に電話をくれた夜からこのスケッチブックはまたページを増やしていったのです。

隆二さんの好きなところはいっぱいあります。

笑顔もそうだし、たまに言葉が凄く悪くなるところも……

でも一番はその優しさです。

簡単に“優しい”と書いたけど隆二さんの優しさはいつも暖かいんです。

それはきっと、隆二さんが挫折感を知っているからだと思います。

自分の才能を認められなかった日々は、隆二さんにとって痛くて痛くて仕方なかったのではないですか？

その痛さを知っているあなたは、私の痛むところにそっと手を当てて“大丈夫”と撫でてくれました。

隆二さんと出会って私は変わったと思います。

こんなこと言うと“重い”と感じるかもしれないけれど、本当にそうなんです。