色戀、召しませ。5 (ページ29)

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「隆二はね、Aちゃんが傍に居たらそれだけで頑張れるんだよ」

「私、そんな力ないです」

「あるよ。より戻してから、まー！テンション高い！」

「そうですか！？」

「そうですよ！？」

「そっかぁ……じゃあ隆二さんが楽しく過ごせるように頑張ります」

「健気だなぁ……健気だからこれあげちゃう！」

臣くんは私のバッグの中に何か突っ込んだ。

「え、何ですかこれ？」

「内緒。あ、彼氏戻ってきたよ」

隆二さんと入れ替わるようにして臣くんは席を立った。

その時、二人が何か小さな声で喋っていたけど私には聞こえなかった。

「帰る？」

「帰って良いの？」

「もう良いっしょ」

テーブルに置いてあった帽子を被って、隆二さんは私の腕を取る。

「さっき臣くんと何喋ってた？」

「喋ってないよ」

「喋ってたじゃん！」

来たときみたいに私の手を掴んで、隆二さんはお店の出口に向かう。

「喋ってねぇし」

「………内緒話？」

「だから喋ってねぇって！」

頑なな人だなぁ。

隆二さんはそのままうちに来た。

めったにない“連休”だから。

部屋が暖まるまで、二人でヒーターの前に座って色々お喋りして……

でもやっぱり臣くんと何を話してたかは教えてもらえなかった。

「早く暖かくなんないかなぁ」

頷いた隆二さんの視線が私のバッグに向けられる。