色戀、召しませ。5 (ページ26)

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「どう？」

私は喉を動かして、体の奥へとそれを流し込む。

「………美味しくない」

「でも食べられた」

隆二さんは静かにフォークを置いて、ナプキンで私の涙をポン、ポンと拭いた。

「嫌な思い出があるから嫌いなんじゃなくて、美味しくないから嫌いなんだよ……分かった？」

頷いた弾みで、テーブルに雫が落ちた。

私がこれを食べられなくて隆二さんが困ることなんて、一つもないのに

大丈夫だよ、簡単だよ、美味しくないから嫌いなんだよ──

こんなに優しく、人に物を食べさせてもらったことなかった。

どこかで隆二さんを呼ぶ声がする。

「………行ってください」

「大丈夫？」

「大丈夫。お皿、きれいにしとく」

ちょっと笑った私に隆二さんは自分が被っていたキャップをポンっと被せた。

泣き顔を隠すみたいに。

「おりこうさんで待っててよ？」

キャップのつばをぺしっと叩くようにして、隆二さんはその場を離れた。

目元がすっかり隠れた私は、彼の残してくれた温もりを更に深く、被ってみた。