色戀、召しませ。5 (ページ21)

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「俺、ちょっと……あっちに」

申し訳なさそうな顔をした隆二さんに、私は笑顔で「大丈夫です」と答えた。

きっと、私が退屈しないようにこの席を取っておいてくれたんだと分かったから。

隆二さんに手を振って、私はまた窓の外を見た。

スケッチブック、置いてくるんじゃなかったな……と後悔。

「あ……」

テーブルの上のペーパーナプキンを一枚広げて置いた。

これにボールペンで簡単に描いてしまおう。

小さな風車がとても愛らしい庭。

私が描くのに夢中になっていると、覚えのある甘い香りが鼻先をかすめた。

「絵が上手なんだね、本当に」

パッと顔を上げたら、本当に出来上がってる顔の臣くんが前に座っていた。

「臣くん、ご機嫌ですか？」

描き上がったナプキンを折り畳んで、手帳の間に挟んでボールペンをしまって

「それか！その仕草か！」

「な、何ですか急に！」

「隆二が言ってたんだよ、Aちゃんはボールペンを指じゃなくて胸の辺りでノックするって」

言われてみれば、私はボールペンを胸の辺りに押し付けてノックする。

「その仕草が好きなんだってー」

「え？これが？」

「きちんと働いてる人って感じするんだってー」

「そうなんだ……」

隆二さんの着眼点は不思議だなと思う。

「イブの日、ごめんね。今さらだけどさ、俺も気が付かなくて」

「いえ！………あ、でも何て言って隆二さんに追い打ちかけたんですか？」

「………え？聞いちゃうの？」

「うん………知りたい」

臣くんは目の前のグラスを一気に煽った。