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「これ何？そこら辺に生えてるやつ？」
「そこら辺にも生えてますけど、それは買ってきたやつです」
そしてそれは“クレソン”と言います。
隆二さんは知らないと思うけど、私は“クレソンのサラダ”のレシピが網膜に焼き付いているのです。
“久しぶり”と言ったあなたの隣で私はじっと、このレシピの載った誌面を見ていました。
「気管に良いんですよ。クレソン」
「へぇー」
「癖があるから苦手かなぁ？あ、卵はトロッとか薄いのかどっちが良いですか？」
「薄いやつ。今日は」
「今日は……」
隆二さんは、これなに？どうしてそれを入れるの？何で？と私が一つ動く度に聞いてくる。
マメ男じゃなくて“なんでなんで坊や”みたい。
「本当は料理に興味あるんじゃないですか〜？」
「なーいっ」
「やれば良いのに………よしっ、出来ました」
「俺持ってく」
「お願いします」
テーブルに並んだ料理を見て、何だかお昼ご飯みたいだなと思う。
「絵本のオムライスみたいだね」
その感想、とっても可愛いですね。
「では」
隆二さんが私に向かって手を合わせる。
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
「え？」
「え？」
「いや……」
我が家には作った人は“召し上がれ”と言う習慣があった。
隆二さん的には違和感があるらしい。
「あー！何！美味いじゃん！」
「何ですか！？その、期待してなかった感満載の感想！」
「違うって！何かさー、ケチャップの味しかしないオムライスない？」
「あります？」
「あるよ！だって前───」
一瞬間をあけて、言いかけた言葉を飲み込むように、隆二さんはスプーンを口に入れた。
「前………？」
私は彼の顔を覗きこむ。
「前？前の何ですか？前…？」
「………ケチャップの味しかしないオムライスない？」
「それさっき聞いた！！」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2016年2月14日 21時
