3 ページ7
・
──母さん、僕のあの卒業設計、どうしたんでせうね?
頭の中で「人間の証明」ごっこをしながら、私は屋根裏をあさっている。
「ええ、4年の冬、3日も寝ずに女を捨てて製作したあの卒業設計ですよ………あった!!」
よくこんなものを此処に運べたなと思いながら、慎重に寝室の床に模型をおろした。
ジーっと眺める。
「………うん!素人感すごい!」
一人で納得していると、チャイムが鳴った。
「隆二さんだ!」
急いで玄関を開けたら、彼の視線は私の頭の上に向けられている。
「ほこり付いてるよ」
そう言って、私の頭を手で払った。
「ちょっと探し物してて。早く上がって下さい」
一時間しかないので。
「え!なにこれ!」
ドアを開けたままだった寝室の中に隆二さんが入っていく。
床に座り込んで、色んな角度から模型を見て私の方を振り返った。
「Aが作ったの?」
「学生の時に。こないだ仕事先の子と、この話してて懐かしくなって出しちゃいました」
「学生がこんなの作れるんだー」
隆二さんはついに腹這いになって建物の中を覗いたり、少し触ったりし始めた。
…………ガリバーみたい。
「あ、柱取れた」
「え!?」
隆二さんの指先に爪楊枝ほどの柱がつままれている。
「ちょっとーー!!!」
私も腹這いになって、その柱を直そうと必死になった。
「手抜き工事だったんじゃないの?」
「そうかも。泣きながら作ってたから………」
二人して床に這いつくばって何をしてんだろ。
可笑しいなぁ。
1714人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年2月6日 21時