検索窓
今日:2 hit、昨日:49 hit、合計:956,212 hit

3 ページ28





新年の街は、どことなく静かだ。









いつもなら深夜でも人通りがあるのに、今日は全然。









夜の10時を少し回った頃。









「ごめん、ちょっと遅れた」









「ううん。あの………歩きませんか?」









「あー………じゃあ、そっちかな」









シャッター、星空、キリンのマーク。









それらを見ながら私たちは歩いた。









何も喋らないで。









隆二さんは、何かを察していたのかもしれない。









「あ………座りましょうか」









ここで、ピザまん食べたなと思いながらベンチに腰をおろした。









「隆二さん……」









私は、あまり上手く喋れてなかった気がする。









ただ、自分の気持ちや仕事のこと………今、とても辛いこと









正直に話した。









こんな風に私から別れを切り出すなんて、夢にも思ってなかった。









「ごめんなさい、何か……多分、ちょっと今私おかしいって言うか」









こんなに強張った彼の横顔は初めて見る。









額に手を置いて、隆二さんは溜め息をついた。









「ごめんなさい………私がもっと両立出来たら良かったんですけど、仕事が」









「うん、分かる。謝んないで」









もう一度、静かに溜め息をついたのが白い息で分かった。









「Aは、夢があるからね………分かるよ」









「勝手でごめんなさい。もっと話した方が良かったんですけど」









「時間が……俺のね、時間が取れなかったし。多分……急にじゃなくて………ごめん、上手く言えないけど」









私たちはまた暫く黙りこんだ。









「……新年早々、フラれるとは思わなかった」









隆二さんがちょっと笑う。









「何か………今更の今更って感じなんだけどコレ」









それは、遅れてやってきたクリスマスプレゼント。









「でも、これは」









「約束したからね。待っててって。あんま……なんもしてやれなくて」









隆二さんは小さな声で「ごめん」と言った。









何もしてあげられなかったのは、私の方なのに…………。









泣きたかった。









でも切り出した方が泣くのは反則だと思った。

4→←2



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (471 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1714人がお気に入り
設定タグ:今市隆二 , 登坂広臣 , 三代目
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年2月6日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。