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新年の街は、どことなく静かだ。
いつもなら深夜でも人通りがあるのに、今日は全然。
夜の10時を少し回った頃。
「ごめん、ちょっと遅れた」
「ううん。あの………歩きませんか?」
「あー………じゃあ、そっちかな」
シャッター、星空、キリンのマーク。
それらを見ながら私たちは歩いた。
何も喋らないで。
隆二さんは、何かを察していたのかもしれない。
「あ………座りましょうか」
ここで、ピザまん食べたなと思いながらベンチに腰をおろした。
「隆二さん……」
私は、あまり上手く喋れてなかった気がする。
ただ、自分の気持ちや仕事のこと………今、とても辛いこと
正直に話した。
こんな風に私から別れを切り出すなんて、夢にも思ってなかった。
「ごめんなさい、何か……多分、ちょっと今私おかしいって言うか」
こんなに強張った彼の横顔は初めて見る。
額に手を置いて、隆二さんは溜め息をついた。
「ごめんなさい………私がもっと両立出来たら良かったんですけど、仕事が」
「うん、分かる。謝んないで」
もう一度、静かに溜め息をついたのが白い息で分かった。
「Aは、夢があるからね………分かるよ」
「勝手でごめんなさい。もっと話した方が良かったんですけど」
「時間が……俺のね、時間が取れなかったし。多分……急にじゃなくて………ごめん、上手く言えないけど」
私たちはまた暫く黙りこんだ。
「……新年早々、フラれるとは思わなかった」
隆二さんがちょっと笑う。
「何か………今更の今更って感じなんだけどコレ」
それは、遅れてやってきたクリスマスプレゼント。
「でも、これは」
「約束したからね。待っててって。あんま……なんもしてやれなくて」
隆二さんは小さな声で「ごめん」と言った。
何もしてあげられなかったのは、私の方なのに…………。
泣きたかった。
でも切り出した方が泣くのは反則だと思った。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年2月6日 21時